今月の主題 水・電解質と酸塩基平衡
Editorial
水・電解質と酸塩基平衡
黒川 清
1
1東京大学医学部・第1内科
pp.2128-2129
発行日 1989年10月10日
Published Date 1989/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222877
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本号は「水・電解質と酸塩基平衡」というテーマでの特集を組んでみた.これは「medicina」では前回,昭和61年の第23巻5号でやはり私が企画させていただいたテーマである.その間の数年に,このテーマに関する臨床,基礎研究の発展などにどのくらいの進歩があっただろうか.臨床での問題点についても着実な進歩はあったがそれよりは,技術的な進歩に助けられてかなり新しい情報が腎尿細管での電解質輸送を中心とした体液電解質代謝の調節系について得られたと言えよう.このような基礎科学レベルでの新しい情報が,どのように日常での診療に役立っていくだろうか,ということを考えると,同じ臨床の領域でも,特に水・電解質と酸塩基平衡の分野は,その病態生理の理解なくしては正しい診断へのアプローチや,より適切な治療方針を立てるというわけにはいかない,という点で特徴があることを忘れるわけにはいかない.
我々の身体の大部分を占める体液には,水はもちろんのこといろいろな電解質がその中にイオンとして存在し,これらの水や電解質の濃度や体内の総量は一定の範囲内に保たれていることは言うまでもない.このような調節系が常に作動しているおかげで,我々が飲食としていろいろな組成の水・電解質を含んだ食事を全く勝手気ままに摂取していても,我々の身体の調節系がそれに対応している.
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