今月の主題 日常臨床にみる水・電解質と酸塩基平衡
Editorial
日常臨床の「水・電解質と酸塩基平衡異常」
田部井 薫
1
1自治医科大学腎臓内科
pp.804-805
発行日 1997年5月10日
Published Date 1997/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904482
- 有料閲覧
- 文献概要
日常臨床での水・電解質と酸塩基平衡異常の頻度が高いにもかかわらず,理解が難しいと敬遠される傾向にある.しかし,細胞の生命活動には水・電解質,酸塩基平衡は極めて密接な関連を持っている.一方,生体は膨大な恒常性維持機構を有しており,臨床的に水・電解質,酸塩基平衡異常が出現するということは,この恒常性維持機構に重大な障害があることを意味している.そこで本稿では,日常臨床上見逃されやすい水・電解質,酸塩基平衡異常について概説し,本特集号の重要性を強調したい.
水・電解質,酸塩基平衡異常の発生頻度について,1990年のPalangeらの注目すべき論文がある.様々な原因で入院治療が必要な患者を連続的に110名調査したところ,62例,56%で酸塩基平衡異常が認められ,それらの患者の47例で電解質異常を伴っていたという.一方,酸塩基平衡異常を伴わない患者で電解質異常を認めたのは2例のみであった1).このことは,電解質異常を考える場合,酸塩基平衡異常を常に念頭に置かなければならないことを如実に表した成績と考えられる.他の報告でも,入院中の患者での血液ガスの検討で,アルカローシスを示す症例が40.9%もあり,これらの患者の死亡率が高かったという.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.