増刊号 診断基準とその使い方
XI.小児
14.胎児性アルコール症候群
高島 敬忠
1
1日本大学医学部・小児科
pp.2322-2323
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222104
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近年,欧米諸国において,主として慢性アルコール症の妊婦から,特徴的な臨床像を有する先天性異常児が出産していることがわかった.これは胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome=FAS)と称し,予防が可能な先天異常児であるだけに,慢性アルコール症の問題と相俟って大きな社会的反響を呼ぶにいたった.アルコールの胎児への影響は胎芽期のみならず胎児期にも,殊に脳発達に障害を及ぼすと考えられているので,胎芽・胎児症であろうと想像されている.
FASにつき歴史的にみると,アルコールの胎児毒性に関しては,すでに古代ギリシャやローマ時代から推測されていたところであり,1700年代には親のアルコール摂取が出生率の減少や虚弱児の出産に関連すると述べられている.また,1800年代半ばには,イギリスのSir Frances Galtonらは,妊婦のアルコール症が,その産まれた児に悪影響をもたらした事実を報じている.しかしながら,一つの症候群として確立されたのは,1970年代に入ってからである.
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