アメリカ便り・4
Fetal Alcohol Syndrome—胎児アルコール症候群
佐々木 茂
1
1ウィスコンシン医科大学
pp.315-318
発行日 1981年4月25日
Published Date 1981/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205841
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■プロローグ
煙草が健康に良くないことはずっと以前から分かっていた事実ですが,日本でも最近嫌煙権などという言葉が飛び出してきてようやくその実害が認識され始めたようです。統計の細かな数字は忘れましたが,父親が煙草を吸う家庭では,吸わない家庭に比して子供の呼吸器疾患罹患率が有意の差をもって高いという報告を読んだ記憶があります。また妊婦が喫煙すればnicotineの作用によって血管が収縮し,子宮胎盤ユニットにおける酸素不足から胎盤の機能が低下してIUGR(子宮内発育障害)を引き起こすことが明らかになっています。最近の若い女性は,煙草ばかりでなくお酒の方にもめっぽう強くなってきましたが,アルコールの妊娠に及ぼす影響はどうなっているのでしょうか。
つい先日のことです。買い物に出かけたショッピングセンターの中で大きな机が並べられて,何か書類が積みかさねられています。数人の女性が通行人に呼びかけています。「何か安売りのクーポン券でも配っているのかな」と近づいてみますと,これが女性飲酒家への警告キャンペーンでした。とくに若い女性にアルコールをたしなむ人が増えて,Fetal Alcohol Syndrome(胎児性アルコール症候群)が問題になっており,marijuana(マリワナ)とともにdrug abuseに対して全米各地でこうした活動が毎日のように行なわれているとのことです。
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