今月の主題 老人診療のポイント
治療および処置上の注意点
外科手術上の注意点
市川 英幸
1
,
林 四郎
1
1信州大学医学部・第1外科
pp.1376-1377
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221801
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■高齢者に対する腹部手術の現状
麻酔,手術手技,術前・術中・術後の管理,栄養補給法などの進歩により,70歳代,80歳代の高齢者に対しても,安全に手術が行われるようになった.たとえば,筆者らの教室における高齢者胃癌に対する胃切除などを例にとってみても,手術死亡例は0に近く,文部省科研費による総合研究班の集計でも,80歳代における待期的開腹術の死亡率は3〜4%1)であり,しかも良性疾患に対する手術ではもちろんのこと,悪性腫瘍に対する根治的手術の場合でもかなり満足できる長期生存が得られている.
もちろん,これらの手術成績は,他の年齢層に比べてより厳しい適応で選ばれた老人を対象にした特殊な成績である可能性もあり,高齢者に対して安易な気持で手術が実施されてよいわけではない.しかし,75歳,80歳あるいはそれ以上高い年齢という理由で手術の実施を断念することは妥当でない.
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