講座 内科診療における心身医学的アプローチ
消化器疾患(3)—過敏性腸症候群,潰瘍性大腸炎
河野 友信
1
1都立駒込病院・心身医療科
pp.1722-1725
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221117
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過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syn-drome,以下IBS)
本症は,消化器外来で最も頻度の高い,機能性の疾患で,消化器病のcommon diseaseのひとつといってよい.そして,本症のほとんどのケースが心身症としての病態を有している.ということは,病態の形成に心理社会的な要因が関与しており,診断や治療に際して何らかの心理社会的側面からのアプローチが必要であるということである.しかし,臨床現場の状況をみると,本症は検査をしても異常所見のみられない機能性疾患であることや,死に至る病ではないことなどから,軽視されやすく等閑視されることが多い.とはいうものの,従来のようなdoctor orientedで,diseaseoriented,かつdiagnosis orientedの医療のあり方では,本症の約4割を占める中等症以上の重症例には対応できず,医療上,種々の困った問題が生じてきている.
患者としての行動をとる本症の60%を超すケースは軽症といってよく,十分に検査をしたうえで,検査結果をよく説明して,器質性の病気として重症でないことを保証し,対症療法としての薬物療法をすれば,医療の場からは去っていくものである.そして,このようなケースの結末は,
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