一冊の本
「ノーベル賞の光と陰」—科学朝日編,朝日新聞社,1981年
水島 裕
1
1聖マリアンナ医科大学・第1内科
pp.931
発行日 1987年5月10日
Published Date 1987/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220973
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少しキザであったらお許し願いたいが,私はノーベル賞や文化勲章を比較的身近なものに感じている.私の父や叔父も文化勲章を受章したし,私個人,多くの同章受章者の教えを受けた.また,ノーベル賞の栄誉に輝いた何人かの人も,個人的によく知っている.それで,なんとなく目に止まった「ノーベル賞の光と陰」を一読し,ノーベル賞をもらった人々とはいったいどんな人達であるかを垣間見ることにした.
この本は科学朝日に連載したものをまとめたもので,肩が凝らずに読めるものである.学問的な記載も多いが,受賞についてlucky,unluckyであったこと,思惑や政治がからんだ例,実際に仕事をした人ではなくボスが受賞したなど,十分起こりそうなこと,また突飛なこと,すなわち本賞の光と陰の部分を,一方ではおもしろおかしく,他方ではかなり痛烈な批判をもって書いてある.ノーベル賞は現在のところ世界最高の賞であることから,その受賞には学問あるいは業績そのものの他,いろいろの問題,中には醜い競争があるのは当然で,このような賞は学問を害するもの,あるいは政治を巻き込むものとして廃止すべきとも読める事実,言い回しがある.
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