今月の主題 内科医のための小児診療のコツ
思春期の異常
生理不順
前坂 機江
1
1神奈川県立こども医療センター・小児科
pp.1370-1372
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220490
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初潮と月経周期
小児期にも卵巣内の卵胞は周期的に発育しているがその大きさは極めて小さく,全身に変化を及ぼす程のエストロジエンを分泌せずに消失する.思春期前になると卵胞の発育は次第に成人に近づき,エストロジエン分泌量も増加してくる.この女性ホルモンの分泌増大により乳房や内・外性器が発育し,身体の急速な発育がおこり,やがて子宮内膜も増殖し,この程度が著明になるとエストロジエン分泌低下後消褪出血がくる.これが初潮であり,乳房腫大から2〜3年後で乳房成熟度が成人に近く,陰毛発生前にみられることが多い.しかし,初潮の発現は性機能の完全な成熟や生殖能の獲得を意味するものではなく,初潮後数年を経てはじめて性機能が完成していく.この間,視床下部-下垂体-卵巣系はまだ発達の過程にあり不安定で,精神的ストレスや環境の変化などにより容易に影響をうけ,周期の不規則さをもたらす.また,卵巣自体も未成熟で初潮後数カ月〜数年は無排卵性であったり,黄体形成不全の状態であり,このため,さらに性周期が不規則となり,月経日数や月経時の出血量が一定しないことになる.こような生理的に月経が不規則な時期に,これが病的なものか,生理的なものか,判定することはむずかしい.そこではじめに正常な思春期の女児の月経について述べ,その後に病的な原因によるものを述べる.
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