講座 臨床ウイルス学・8
ウイルスと肝炎
岡本 宏明
1
,
真弓 忠
1
1自治医科大学医学部血液医学研究部門・予防生態学教室
pp.710-716
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220323
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Epstein-Barrウイルス(EBウイルス),サイトメガロウイルス等は全身感染症の一部分症として,肝臓にも器質的,機能的な病変を起こすことが知られているが,これらのウイルスによる肝炎は極めてまれである.通常,肝臓を主たる増殖の場とする肝炎ウイルスによる肝炎(ウイルス肝炎)が多く認められ,A型肝炎ウイルス(hepatitis Avirus:HAV),B型肝炎ウイルス(hepatitis Bvirus:HBV),および数種類の非A非B型肝炎ウイルスがその起因ウイルスとなっている.
ウイルス肝炎は便口感染を主な感染経路とする流行性肝炎と,主として血液を介して感染する血清肝炎の2つに大別されている.現在,それぞれについて一つずつ起因ウイルスが同定され,A型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルスと名づけられている.しかし,これら以外にもインド,ビルマ,ネパール等では流行性肝炎をひき起こすHAV以外のウイルスの存在が報告され,流行性肝炎型の非A非B型肝炎ウイルスと呼ばれている.患者回復期血清を用いた免疫電顕法により,直径27mmのHAV様のウイルス粒子が認められているが,まだゲノム構造は明らかにされていない.また血液を介して感染する血清肝炎について,HBV以外のウイルス(少なくとも2種類)の存在が強く示唆され,まとめて非A非B型肝炎ウイルスと呼ばれている.
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