今月の主題 止血機構とその異常
治療の進歩
外科手術における止血管理—心臓外科手術
林 久恵
1
,
永瀬 裕三
1
,
寺田 正次
1
1東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所・循環器外科
pp.284-286
発行日 1986年2月10日
Published Date 1986/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220227
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心臓外科では補助手段として人工心肺装置を用いた体外循環を必要とする症例が多い.そこで,人工心肺灌流を始める前には,血液が凝固しないようにヘパリンを投与し,体外循環終了時に硫酸プロタミン液でこれを中和する必要がある.しかし,これらの薬剤を患者の体重に応じて一定量定めて注射しても,患者の状態によってその対処のしかたは異なる.患者が出血のために,ショック状態であったり,また手術を受ける患者が低酸素血症によるチアノーゼがあったりすると,術中の大量出血,輸血1,2)のためにDICを併発し,血液の凝固性がなくなり,いろいろな臓器からの出血で,患者が重篤に陥ってしまうこともある.このため術前,中,後を通じて,その管理をするわけであるが,ヘパリンを使用し,硫酸プロタミンを中和する頃よりactivated clotting time(ACT)を測定しながらコントロールを行う.術前に出血・凝固時間の延長している例はその原因を調べ,とくに血小板数の少ないものは機能検査を行い,手術前に血小板輸注ができるように準備をしておく必要がある.症例によってはdonorの選択を行って連続血液成分分離装置による血小板輸注の必要があることもある.
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