臨時増刊特集 エコー法の現況
Ⅲ トピックス
82.音響物理量の計測—エコースペクトルモーメント断層法
中山 淑
1
1上智大学理工学部・電気電子工学科
pp.2528-2532
発行日 1985年12月1日
Published Date 1985/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220118
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超音波エコー断層法は,ほとんどあらゆる臨床科で重要な診断手段として確固たる地歩を占めているが,画像に定量性を欠くことが最大の難点である.これを補うために,エコーそのものを分析し,定量的な情報をひきだそうとする種々の試みが盛んになっている.比較的一般的なのは通常のBモード画像上で,音響特性が一様に見える領域を選び出し,その部分のエコーの原信号を分析して当該領域における超音波の減衰特性,散乱特性などを知ろうとするものである.しかしこのような方法が適用できるには,かなり広い一様領域が存在する必要があり,びまん性肝疾患などにはある程度の有効性が見込まれるものの,一般的には適応が限られる.腫瘍の鑑別診断などを目標に置くと,やはりかなりの空間分解能をもつ『画像』を提供することが必要であろう.この新たな画像は,信号論的に従来のBモード画像のもつ情報以外の情報をもつべきであり,かつ定量的でなければならない.もちろんこの画像自体から組織音響特性が直接読みとれれば申し分ないが,そうでなくても上述した定量的分析を行う関心領域内での,音響特性の一様性を確認するのに役立つものとなるべきである.
著者らはこのような可能性をもつものとして,反射エコーの周波数スペクトル分布のモーメントから導かれる種々の量を画像化することを提案し研究をすすめている.
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