臨時増刊特集 エコー法の現況
Ⅱ 診断と治療への応用
B 腹部エコー法
50.膀胱疾患
中村 昌平
1
1東京大学医学部・泌尿器科
pp.2368-2371
発行日 1985年12月1日
Published Date 1985/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220086
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超音波検査の対象疾患
膀胱内面は硬性鏡による詳細な観察が比較的容易に行われる.このため膀胱疾患における超音波診断の意義はある程度限られてくる.対象疾患のまず第1は膀胱腫瘍である.この場合,腫瘍の存在の有無は膀胱鏡で確認される.疑わしければ内視鏡的生検が決め手となる.超音波診断の主たる役割はその浸潤度診断にある.膀胱腫瘍では内視鏡的手術で根治できる非浸潤性表在性腫瘍をしばしば経験する一方で,膀胱全摘を必要とする深部浸潤性腫瘍も少なくない.膀胱全摘術は手術侵襲が大きいばかりでなく,尿路変更術を必要とし,術後の患者の生活に一定の制限を与えることになる.膀胱腫瘍浸潤度診断はほかに確立された方法がないため,超音波診断が重要な意味をもっている.
膀胱鏡は魚眼レンズであるため,腫瘍の大きさの客観的な推定が困難なところがある.ある程度大きな腫瘍では膀胱鏡の死角となる部分が大きく,全体の形がよく把握できないことがある.内視鏡のもつこのような欠点を補う手段としても超音波検査は有用である.
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