今月の主題 ウイルス肝炎—現況と展望
効果的予防法
肝炎ウイルスの消毒
遠山 博
1
1東京大学医学部・輸血部
pp.1024-1025
発行日 1985年6月10日
Published Date 1985/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219791
- 有料閲覧
- 文献概要
肝炎ウイルスの消毒法の効果を立証することは至難なことである.従来,①retrospectiveな疫学的解析,②抗原性失活実験,③ボランティアによる人体実験,④チンパンジー実験の4法が組み合わされている.③,④が最も信頼される.①は従来欧米で歴史的に案外に評価され,②では,Bondら(1977)が,抗原力を完全に失わせることはウイルスにきわめて大きな物理的・化学的打撃を与えることで,感染力はとくに失っていてもなお抗原性は維持している.そのため抗原性を失活させるか,大幅に低下させれば消毒効果を証明したことになるとした.④チンパンジーはきわめて高価でしかも入手困難となっており,薬品消毒の場合,薬品の種類・濃度・作用時間および温度などの組み合わせが無数になって,そのしっかりした実験立証は至難なことになって来ている.消毒法の研究マーカーではHBs抗原を用いて,その効果で他の肝炎ウイルスに対する影響を類推する.消毒法には物理的方法(主として加熱)と化学的方法(薬剤)とがあることは申すまでもない.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.