臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第3集
Ⅵ.血液検査
60.血液粘度
磯貝 行秀
1
Yukihide Isogai
1
1東京慈恵会医科大学・第3内科
pp.2234-2236
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219381
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■血液の構成と粘度
血液は,血漿中に有形成分(赤血球・白血球・血小板)およびカイロミクロンが浮遊する懸濁液とみなすことができる.血漿中には,低分子の有機・無機物質および各分画よりなる蛋白質(7.0gl/dl)が溶解している.したがって,血液の力学的性質は,構成要素,とくに有形成分の濃度・形状・硬軟・相互作用などのほか外力(ずり応力)および温度の影響をうけて変動し恒常的なものではない.また,生体内の循環系では,血流速度,血管径,血球濃度,赤血球集合および体温などによって変化を示す.血液の力学的性質とはここでは流動的性質をいうが,粘度viscosityによって表すことができる.しかしながら粘度に影響を与える要因は多く,赤血球濃度(もしくはヘマトクリット,Htと略),赤血球の変形能,赤血球集合,血漿粘度およびずり速度が主なものである.いずれにしろ,血液の流れ易さは粘度によって決まると言えるが,血管内流動では血管径および血流速度によって粘度は変動し一定していない.
粘度とは,ずり応力(τで表す,単位dyne/cm2)とずり速度(γで表す,単位sec-1)の二つのパラメータで規定されている.たとえば,図aのごとく1),表面が単位面積よりなる立方体を仮定し,表面に接線方向の外力(ずり応力または剪断応力という)を作用させると,立方体は図aのごとくずり歪み(ずり変形ともいう)を生じ,歪み率γは,γ=s/lで表される.
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