天地人
♫3年目の本気—ファーブルの昆虫記
猫
pp.839
発行日 1983年5月10日
Published Date 1983/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218284
- 有料閲覧
- 文献概要
医者となって3年,衣食住は自前で充足できる位のお金は入るようになったが,暇は随分となくなってしまった.たまに暇ができると未だ我がステータス・シンボルのオンボロ愛車(49年型チェリー)にとび乗って,友人の口聞きで見も知らぬ佗しい当直室での仮寝に向って国道を走っている自分をよく見出したものだ.最初の一年目は,こうした旅芸人風生活をこなせるという小気味の良さにかえってあらゆる活動度がグングン上昇して,これが本当に私なの—と自己改革(悪?)の白昼夢に酔うことになる.しかし—である.3年目ともなると……♫3年目の浮気は大目にみても,こうした"金はあっても暇がない"状態に,どこか嵌められたかなと思いつつ,一度出来てしまったlife styleを変えられないということにもなりかねない.おまけに,看護婦詰所から実験室へと比重が移ってくると事情は一層複雑になる.
否が応でも時代感覚に敏なる医師としては,一芸に徹することは何だか不安である.かくして,創造性のないところを要領でこなして多角的に力を得ようとして何だか玉虫色になってしまう.玉虫といえば,私は男の人の中の玉虫色的性格に興趣を感じたことがあったっけ.何にせよ,そう簡単に判っては,つまらないのである.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.