オスラー博士の生涯(最終回)
ウィリアム・オスラー博士の著述とオスラーに関する文献
日野原 重明
1
Shigeaki Hinohara
1
1聖路加看護大学
pp.2100-2106
発行日 1982年11月10日
Published Date 1982/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218032
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ウィリアム・オスラー卿(Sir William Osler)は,19世紀の生んだ世紀の医人である.人文学の教養を濃く身につけ,人間性の豊かな科学者,入文学者として,また病理学に基礎づけられた内科学を最高に具え,よき臨床医作りのために,アメリカに新しい医学教育のシステムを築き,若きものを指導した優れた教師であった.
彼は,ヒポクラテス,アリストテレス,ジョン・ハンターに似た緻密な観察力の持ち主であり,疾患の病像を科学的に捕えるとともに,病む人間を理解し,共感性をもって患者に接した内科医であった.彼によって書かれた数多くの文献,臨床研究,医学生に語られた数々の講演,英語のほか,仏,独,伊,スペイン,ポルトガル,中国語に翻訳された「内科学書」は初版から16版に至るまで(1892〜1944)の期間,世界的内科書として各国の医学生や医師に愛読された.ただ一つの例外は,中国語版が横浜で印刷された(1909年)事実にもかかわらず,日本の医学生には全く紹介されなかったのである.今日,諸家による内科のテキストをみると,Osler's nodes(細菌性心内膜炎にみる),Osler's(or Vaquez's)disease(真性多血症),Osler・Rendu-Weber Syndrome(動静脈吻合に併う多発性毛細血管腫症),Osler's phenomenon(凝血機序への血小板の参与)といったオスラーの名が残されている.
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