今月の主題 リハビリテーションの現況
治療法
ハリ治療
井上 和彦
1,2
Kazuhiko Inoue
1,2
1自治医科大学・リハビリテーションセンター整形外科
2自治医科大学・整形外科
pp.402-404
発行日 1982年3月10日
Published Date 1982/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217659
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リハビリテーションにおいて,痛みを除去することが治療の主目的である場合があり,このような場合にハリ療法が単独で,また他の治療法との組み合わせにより用いられる.
ハリ治療は古くから中国および日本などで疾病に対する重要な治療法の1つとして行われてきた.この治療法が脚光を浴びるようになったのは,東洋医学への再認識とMelzack, Wall & Caseyの提唱したgate control説である.gate control説とは,「痛みは痛みの経路に限局した神経活動によって起こるのではなく,むしろそれぞれ特殊機能を有するいくつかの互いに作用する神経系の活動の結果であり,染色性の特異な膠様質が求心上行路の一つの門をつくり,細い線維活動で開かれているが,phasicな太い線維活動で閉じられようとし,この門の開閉には中枢から下行する促進系と抑制系が影響する」というものである.この痛みを科学的に考えることが痛みに対する治療を進歩させた方現在は否定的であるにせよ,Melzackらの痛みを神経生理学的に説明することが,古くから東洋において行われているハリ治療に学問的支持を与え,そしてハリの有効性が多くの医師により再認識された.
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