臨時増刊特集 臨床医のためのCTスキャン
縦隔
上部縦隔のCT像
pp.2150-2151
発行日 1981年11月20日
Published Date 1981/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217470
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大動脈弓から胸郭入口までの上部縦隔は,今までのX線診断で解剖学的形態を具体的に知るのは簡単ではありませんでした.このため腕頭動静脈の造影も必要となることがしばしばでした.血管系の周囲は成人になると脂肪組織が比較的多い部位であり,CTでは単純スキャンで血管,食道,気管などの断面がほぼ正確に判断できるようになりました.図1は,この部分の横断面でのシェーマを示したものです.図2は上部縦隔に病変がない例のCT像です.無名動脈が気管の前にあるのや,左鎖骨下動脈と食道および気管との関係など,横断面における形態がよくわかります.
上部縦隔の右背側では,気管の背後に右上葉の後内側が入り込んでいるところがあります.奇静脈弓より上方の部分になるので,このへこみを奇静脈上部陥凹(supraazygos recess)とよびます.この陥凹の深さは人によりずいぶん差があります.図2の例では気管が脊柱のすぐ前に接していて,この陥凹は浅く,気管のうしろまでは入っていません.この部分の肺と胸膜に少し病変があります.図3-Aの例では,この陥凹は気管と食道のうしろまで,脊柱の正中線を左側にこえて深く入り込んでいて,左右の上葉の内側が接するまでになっています.図3-Bでは,左右の肺の間に食道が介在している例です.
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