今月の主題 白血病—最新の概念と治療
新しい概念
hairy cell leukemia
木谷 照夫
1
Teruo Kitani
1
1大阪大学微生物病研究所・内科
pp.1878-1879
発行日 1981年11月10日
Published Date 1981/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217395
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6年前筆者らが初めてhairy cell leukemia(HCL)の本邦例と題して3症例を報告して以来,わが国でもすでに20例を越える症例が報告され,欧米に比して極度に発生率が少ないと考えられているこの白血病も,次第に見出される頻度が増してきている.といっても,欧米のように1つの研究機関なり病院が多数例を集めてこの疾患の問題点を研究するにはまだ症例が乏しく,個々の例が稀少な症例報告として発表されているのが現況である.しかし,この疾患が貴重な症例として重視されるのは,何もその稀少価値によるものではない.この白血病細胞は特異な形態にもかかわらず,生理的な血球中に類似の細胞を容易に見出すことができない.そこでこの白血病細胞の由来する,腫瘍化をおこした元の生理的な細胞は何であるのか,またその細胞は多様なリンパ系・組織球系細胞の中でどこに位置づけられ,どのように生体内に分布し,どのような生理的な機能を担っているのかを知るのが重要な課題なのである.もちろん,腫瘍化に伴って本来持たない形態上の特性をそなえるようになったのかもしれないが,しかしこれほど十分成熟,分化したように見える細胞で,しかもこのような慢性経過をとる腫瘍では,腫瘍異形によりまったく新しい形態的特徴をそなえるようになることは考えにくい.ともあれ,この白血病細胞の細胞学的,免疫学的研究は興味深いものである.
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