他科のトピックス
レーザーメスによる脳腫瘍の手術
滝澤 利明
1
Toshiaki TAKIZAWA
1
1中央鉄道病院・脳神経外科
pp.310-311
発行日 1980年2月10日
Published Date 1980/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216425
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レーザーとその応用
脳腫瘍の手術は出血との不断の闘いである.しかも外科の有効な止血手段である止血鉗子や結紮法を適用できない.そのため脳外科独自のさまざまな止血法が考案されてきた.
その中でもっとも重要なものは,米国のH. Cushingが1926年にはじめて導入した電気メスである.これは高周波電流を生体に通電するとジュール熱が発生し,組織を熱凝固するもので,革命的な発明であった.その後半世紀以上,電気メスは脳外科医の主要な武器であり,現代の脳外科は電気メスなしでは考えられないのである.一方,量子エレクトロニクスの成果であるレーザーは1960年に誕生した.LASERという言葉はLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)という英語の頭文字を連ねて作った合成語である.通常レーザー光を発生する装置をさすが,場合によりレーザー光線そのものを意味する.レーザー光は自然界に存在しないまったく人工的な光である.自然光との違いは波長も位相も揃った光であるという点で,そのため波の山と山,谷と谷を重ねあわせて増幅できる.しかも光であるから特殊なレンズで一点に集光できる.つまり,一点に莫大なパワーを集中できるわけであり,波長によっては鋼鉄でもダイアモンドでも一瞬にして穿孔する.
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