今月の主題 デルマドローム—内科疾患と皮膚病変
トピックス
最近注目される薬疹—末梢血管拡張剤および脳代謝促進剤による苔癬型薬疹と紅皮症型薬疹
山本 達雄
1
1東京都養育院付属病院皮膚科
pp.1602-1603
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208097
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はじめに
筆者が老人に一種独特の水疱性疾患のあるのに気付いたのは,老人病の専門病院である東京都養育院付属病院に赴任した昭和47年の秋のことである.それは類天疱瘡に似るが,その水疱は大きくなく,小指頭大までの小紅斑上に小水疱をつけた皮疹が汎発するもので,一見滲出性紅斑型の薬疹のごとくに見え,組織学的には表皮下の水疱で,類天疱瘡とも疹出性紅斑ともとれなくもないが,むしろ苔癬様反応といったほうが妥当で,ステロイドを内服させると類天疱瘡とは違ってこれに非常によく反応するものである.道部1)は昭和47年4月の第71回皮膚科学会総会で脳卒中患者の療養生活中に水疱および苔癬様皮疹の単独発生ないし両皮疹が混在発生することに奇異の感を抱き,これを発表し,これら皮疹の発生には患者の素因もさることながら,脳血管障害の治療のための各種薬剤が,長期間投与されていることが関係すると推定した.また同じ学会で杉山2)らは扁平苔癬患者が昭和45年を境に,急速に増加し始め,しかもその増加分が高齢者の扁平苔癬患者に基づくことを指摘するとともに,その発生にはこれら老齢患者が内服していた主としてサイアザイド系降圧利尿剤をはじめとした各種薬剤が関与していると考えた.こうした報告ではまだ皮疹発生の主役が後述の末梢血管拡張剤であるシンナリジン(以下,シ剤と略す),脳代謝促進剤である塩酸ピリチオキシン(以下,塩ビ剤)であることには気付いていない.
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