今月の主題 浮腫と臨床
臓器性浮腫
肺水(浮)腫
原澤 道美
1
1東大老人科
pp.1264-1265
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207360
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はじめに
肺水腫は肺における異常な血管外水分貯留状態と定義される.正常肺はその最も重要なガス交換機能を適切に維持するために,肺胞を湿った状態に保つとともに,そこに余分な液体が留まらないようにできている.肺毛細管壁を横切る液体の移動は,毛細管における血管内外圧差と血漿膠質浸透圧とによって決められているが,肺循環系は低圧系であるため,肺毛細管圧は最も高い部分でも約10mmHgに過ぎない.ところが,血漿膠質浸透圧は約25mmHgなので,たとえ水分が肺胞内に入ったとしても容易に吸収されることになる.このように,水分貯留からとくに防御されている肺に,なんらかの障害によってひとたび肺水腫が発生すると,生命の維持に必要なガス交換機能が直接障害されるので,極めて重篤な病態となり,救急的治療が必要である.
従来,臨床的に遭遇する肺水腫は,そのほとんどが心疾患によるもので,それによる肺毛細管圧の上昇がその機序となっていた.しかし,近年,高地肺水腫,ショック肺,ヘロイン肺水腫,成人型呼吸障害症候群などの,非心疾患性の肺水腫が注目せられるようになってきている.
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