今月の主題 リンパ組織の基礎と臨床
リンパ球と臨床
天木 一太
1
1日大第1内科
pp.1188-1190
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206723
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15年ほど以前には,リンパ球の働きについてほとんど何も知られていなかった.リンパ球は血液中白血球の30%あまりを占あているので,何か機能を有してはいるのであろうとは考えられたが,重要な機能を営むような構造を有していなかったし,機能を推定させるような事実もなかった.その後,近交系動物を用いた実験免疫学の進歩によって,リンパ球の偉大な免疫学的機能が次第に明らかになってきた.哺乳類は,自己以外の外界よりの異物は同種の細胞や蛋白までも,すべてnon-selfとして排除してしまうが,この免疫学的能力の大部分はリンパ球が受けもつことがわかってきた.実際,輸血に際してさえも,どうにか他人から障害なく受け入れられるものは,型のあった赤血球くらいであって,白血球,血小板となると同種免疫反応が起こりがちである.ヒトでは親兄弟であっても,他人から臓器移植をうけることは困難である,個人は一卵性双生児がいない限りはまったく孤独であって,自分を組織の分野で援助してくれるものはいない,この厳しい免疫反応において,リンパ球はnon-selfをその表面のレセプターで判定するらしいが,とにかく生体内では,まったく容易でないことが起こっているわけである.
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