今月の主題 糖尿病への新たなる対処
合併症に関する新知見
網膜症
福田 雅俊
1
1東大眼科
pp.754-757
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205984
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はじめに
糖尿病性網膜症(以下網膜症と略す)は腎症とともに代表的な細小血管症であり,その形態学的または生化学的な病態については共通点が極めて多い.しかしその細小血管の背景にある循環組織は脳の一部ともいうべき網膜であり,これを取り巻く環境は硝子体と呼ぶ水の飽和組織や血液に富む脈絡膜であり,その機能は視覚という極めて鋭敏かつ特殊な感覚の受容器であるという全く特殊な部位であるため,その臨床には他の細小血管症とは異なる独自の問題が少なくない.
その発症・進行には糖尿病という代謝異常の持続と,とくにその乱れとが密接に関係していることは事実であるが,長年月にわたるその代謝異常のコントロール状況の正当な評価が困難であることも手伝って,必ずしもこれだけでは意味づけのできぬ症例にしばしば遭遇する.しかし,その終末点が失明という死亡にも勝るとも劣らぬ苦痛を患者に与えるものである点,その病理学的解明を待っていられない臨床医学の悩みと焦りがある.
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