今月の主題 意識障害への新しいアプローチ
診断のポイント
酸塩基平衡異常のある意識障害
下条 貞友
1
1慈恵医大第3内科
pp.46-47
発行日 1975年1月10日
Published Date 1975/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205733
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はじめに
酸塩基平衡異常のみられる意識障害の多くはその原因が中枢神経系以外の他臓器,主として肺・心・肝腎等の重篤な臓器障害に由来する.しかし,酸塩基平衡の異常は必ずしも意識障害の一次的な原因でなく,水・電解質バランス等の体液異常,あるいはアンモニア,uremictoxin等の代謝産物の異常な蓄積などと多元的な複合因子の1つとして作用している場合もある.このような体液異常はびまん性に脳細胞機能を抑制する結果,意識・精神に異常をきたして,いわゆる代謝性・中毒性脳症を形成するが,その代表的なものに糖尿病性ケトアシドーシス,尿毒症性脳症および肝性脳症等がある.このような脳症において,酸塩基平衡障害の程度と意識障害または臨床的重症度との間には通常grossな相関がみられるが,個々の症例についての分析では理解に苦しむ場合もよく経験される.これは各種脳症において脳細胞機能の障害が必ずしも酸塩基平衡異常という単一の因子で影響されるものでないことを示している.
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