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WPW症候群は周知のごとく,この症候群の概念の設立に貢献したWolff,Parkinson,Whiteらの3人の頭文字をとっで名付けられたものです.このWPW症候群とは,心電図上で,①PQ時間の短縮(0.12秒以下),②デルター波の存在,③QRS幅の延長が認められるものをいいます.このWPW症候群は一種の刺激伝導異常の疾患であることはいうまでもありません.正常の房室伝導路の他に心房と心室とを短絡(short-circuit)する経路―これはKent束と呼ばれている―があって,心室の一部はこの短絡路を通ってくる刺激により興奮し,残りの心室は正常なコースを通ってきた刺激によって興奮することになります.この短絡路を介して刺激が早期に心室の一部に伝達されるので,PQ時間は短縮するのであり,デルター波が生じるわけです.Rosenbaumらは,右側胸部誘導で高いR波が認められるものをA型,深いS波またはQSパターンが認められるものをB型と分類しています.また,QRS全体の波形からではなく,デルター波が前方に向いているものをA型,後方に向いているものをB型と分類すべきであると主張するものもいます.
WPW症候群の心電図は,いろいろな疾患と紛らわしいパターンを示しますが,なかでも心筋硬塞,右室肥大,右脚ブロックならびに左脚ブロックなどと,うっかりすると誤診することがあります.時系列の変化を追うことのできるスカラー心電図では,PQ時間の短縮に注意すれば,そう馬鹿げた誤りは犯さないですみますが,1心拍を抽出するループ表示のベクトル心電図では,時系列の変化に対しては全く無力ですので,よほど注意してinitial conduction delay(デルター波に相当します)の存在に気を配らなくてはなりません、このためには,ループの撮影はできるだけ鮮明でなければなりません.原点付近はループ表示の最も弱い点ですので,輝度調整を充分に行ない,原点のぼやけた写真をとらないように注意すべきでしょう.また,Tループ,Pループを拡大しておのおの1枚とるようにしておくと,QRS初期部分も同時に拡大されて映されていますので,initial conduction delayの有無の判定には便利です.
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