小児緊急室
小児急性薬物中毒(飲用の場合)
山本 高治郎
1
1聖路加国際病院・小児科
pp.544-545
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205410
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通報受理時点における判断と指示
薬物中毒の診療は多くの場合,家人とくに母親からの電話による通報とともに始まる.薬物中毒の9割以上は,飲用によるものであるから,demulcentの投与と嘔吐の誘発が救急治療の第一歩となることはいうまでもない.この際強酸,強アルカリ,灯油,ガソリンなどの石油蒸留物の場合には,嘔吐誘発は一応禁忌と考えねばならない.したがってそのような毒物でないことを確認する必要がある.ただし現在の家庭用品の中には,食道に腐蝕と瘢痕をもたらすような強酸や強アルカリはまず存在しないから,水の投与と嘔吐の誘発で多くの場合大過はないと考える.灯油については,気管内送管を行なった後胃洗滌に移ることを原則とするよう,米国の成書は述べたものが多いが,これは吸引性肺炎の危険のためである.しかし大量の誤飲で胃洗滌が遅れた場合には,吸収による重篤な障害の危険がある.下記の吐根シロップは,自然な嘔吐反応をおこすので,吸引の危険は少なく,その使用をすすめる著者もある.石油の類では,粘稠度が低く表面活性の高い灯油,ガソリンに肺炎の危険があるが,流動パラフィンは完全なnon-toxic ingestionである.嘔吐誘発の方法は,欧米ではその有用性と安全性が再評価された吐根シロップが用いられており,家庭常備薬のひとつとなっている.しかしわが国では薬局方への記載もなく入手の方法がないので,指あるいは匙を用いて咽頭後壁を刺激する方法をとらざるを得ない.demulcentとしては,牛乳,生卵などが用いられる.流水を使うときは,100〜150ml与えて嘔吐誘発を行なうよう指示する.
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