専門医に聞く・17
高度な高血圧に痛風と眼底出血を伴い,軽度の脳血管障害をみた70歳男子の例
菅 邦夫
1
,
木村 武
2
,
斎藤 文彦
2
1東京都菅内科診療所
2岩手医大・第2内科
pp.96-99
発行日 1974年1月10日
Published Date 1974/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205276
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本症例を要約すれば,70歳の管理職で,15年前より高度な高血圧があり,これに痛風と眼底出血を併発,さらに最近軽度の脳血管障害の続発をみており,いわゆる高血圧症第III期に属すると思われるが,心,腎には病的所見はほとんどみられず,また,糖尿病傾向もないということになろう.
われわれも日常診療に当たっていて,しばしば遭遇する症例であるが,本例の如く来診が不定期的な者については,全く同様の悩みをもっている.というのは,高血圧の治療は本来それによってもたらされる器質的な病変の発生や進行を極力阻止しようとすることが目的であって,第III期の高血圧患者では,その病変が既に多少なりとも明白に発生してしまらているわけであるから,治療も多面化し,複雑となるばかりでなく,時として御指摘の如く矛盾に陥ってしまうからである.設問が血圧の調節にしぼられているので,以下われわれの考え方を開陳するが,治療の成否は,これはすべての疾患について共通で,しかも自明なごとではあるが,病気と取り組む患者の姿勢によって,大きく左右されるということである.定期的な受診で必要な諸検査を実施し,医師が病態の推移をできる限り正しく掌握し,適切な助言を与え得なければ,結局不幸なのは患者自身にほかならないだろう.患者と医師との間に充分な意志の疎通,相互信頼がなければ,有効な治療方法を見出すことは不可能といってよいと思うのである.
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