特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
X 腎・泌尿器
3.腎盂腎炎の治療
急性腎盂腎炎の抗生物質療法と治癒判定
名出 頼男
1
1名古屋保健衛生大泌尿器科
pp.1954-1955
発行日 1973年11月20日
Published Date 1973/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205177
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急性腎盂腎炎と一般に呼ばれるものの多くは,非閉塞性または一次性感染といわれる単純な感染症であるが,尿路の器質的異常がある場合や,ある種の免疫不全状態などで二次性感染と呼ばれる範躊に属しはするが,臨床的には急性腎盂腎炎の形をとってくるものもある.ただ,非閉塞性と呼ばれるものでも,慣用的な尿路の検査法では見出せない場合もあり,また膀胱炎→腎盂腎炎という常識的な経路による感染成立においても,一時的膀胱尿管逆流現象が重要な発生機転であるとすれば(これは最近定説化した感があるが)一時的にもせよ,機能的器質的異常が尿路にあることになる.一方,二次性感染でも恒常的膀胱尿管逆流現象があって成立する場合など,早期に発見して薬剤を投与し,厳密な監視態勢の下に置くと慢性症にはなかなか進行せず,時に急性症の再発(再感染によることが多い)をみるのみで経過することが少なくない.また軽度の通過障害による水腎症などがあった場合でも薬剤の種類により,また投与法により単純な急性症と区別のつかぬような反応を示して治癒に向かうこともある.したがって,急性腎盂腎炎と思われる症状・症候の揃った尿路感染症の治療に当たっても,薬剤投与による治療は無論必要ではあるが,充分な泌尿器科学的検査による尿路異常の有無の検索および爾後の追跡が不可欠である.
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