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結合織疾患で,ある時期に1つの疾患に特徴ある臨床症状を示したものが,次の次期に前の症状が全く消失し,他の疾患に特徴ある所見を示すものを移行とよぶ.これは病初期に示した症状が次の時期にみられた他の疾患のものと考えるか,1つの疾患が別の疾患に変化したと考えるかである.DuboisらはRA,SLEなどは遺伝的な異常蛋白血症を中心に車輪の輪のように配列し,その回転によって移行の可能性があることを示しているが,この立場をとると移行の過程に同一患者に2つの結合織疾患のそれぞれ特徴ある臨床像がともにみられることがある.かかるものをOverlap症候群とよぶ.結合織疾患の移行やOverlapの問題は1140年すでにKeilなどによっても指適されていた.教室の結合織疾患388例(RA 200例,SLE89例,PSS57例,PM30例,PN6例)の中RA-SLE2例,RA-PSS7例,RA-PM1例,RA-SLE-PSS5例,RA-PSS-PM1例,SLE-PSS7例,SLE-PSS-PM1例およびPSS-PM1例中の25例が移行あるいはOverlapで,その組み合わせは複雑である.
RAで移行,Overlapが問題にされたのはLE細胞発見後であり,LE細胞現象が陽性のRAが見出されたことにRAとSLEのOverlapやRAからSLEに移行したと考えられるものに気付いた.そのような例はRAの亜型(RA with systemic manifestation),SLEの亜型(SLE with rheumatoid rnanifestation)あるいは合併のいずれかである.そのいずれかを決定することは診断に特異所見がない3で,極めて困難であり,臨床所見の詳細な観察が大切である.そこでRAとSLEにみられる関節症状,皮下結節,腎症を臨床所見として取り上げ,さらにLE細胞,抗核抗体,リウマチ因子について論じ,移行,とくにRA-SLEの問題を考える場合の参考としたい.
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