今月の主題 消化管ホルモンの臨床
消化管ホルモンの臨床
Zollinger-Ellison Syndrome
田井 千秋
1
1岡大第1外科
pp.586-587
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204731
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病因および病態
今日Zollinger Ellisnn症候群として一般に理解されているのは,膵ラ氏島(非β細胞)腺腫と,それに随伴した胃酸分泌亢進,再燃を繰り返す上部消化管の難治性潰瘍を呈する一群の疾患である.ここで臨床上問題になるのは難治性消化性潰瘍で,大部分の症例が種々の抗潰瘍剤による保存的療法に頑固に抵抗し,やむなく外科にまわり広範胃切除術を受けることになる.今日一般化している広範胃切除術(幽門領域全域)で,普通の消化性潰瘍の場合,その98%は完治し,潰瘍の再発を認めないものである.ところが,本症に伴う消化性潰瘍の術後では,時たたずして潰瘍の再発を見,再発の部位も従来の吻合部潰瘍と異なり,多くの場合,吻合線より遠く隔れたところに,しかも多発性に生じるなどして結局2度,3度と開腹を余儀なくされるのが本症の定型的経過である.
すでにZollingerらが指摘していたように,膵ラ氏島(非β細胞)腺腫から胃酸分泌刺激ホルモン(gastrin)がnoncontrolableに分泌される所にそもそも本症成立の秘密があるわけで,その意味から本症はまさしく膵のホルモン産生腫瘍に基づく内分泌疾患とみなされている.
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