Editorial
消化吸収試験とその評価
松永 藤雄
1
1弘前大第1内科
pp.585
発行日 1972年5月10日
Published Date 1972/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204076
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消化器・代謝疾患の原因,また結果としておこる消化と吸収の機能の変化を知ることは,それらの診断・治療計画・予後推定などに重要である.しかし戦前にはこの種の機能検査に有力な方法はほとんどなく,糞便の諸検査や,腐敗性および醗酵性消化不良症の指摘などに止まる貧弱な段階にあった.従ってこの方面のテストは,戦後,とくに最近20年に進歩したといって過言でない.Shinerにはじまる小腸生検の材料を自在に活用しての光顕・電顕・走査電顕などの観察に加えて,生化学・組織化学・酵素学的に研究する道が開けたが,他方にRIをlabelしてそのtraceを追う方法が容易となり,またこれらの組合せによる組織内RI量の測定やradioautographyなども研究に寄与してきた.
この種の躍進は医学全般にいえることであるが,機能異常ひいては疾患の程度を,大まかながら量的段階に分けて診断できるようになったことは,それまでマクロの形態変化を診断基準とする傾向が,この期間に機能検査法に入れ替わりつつあった結果ともいえる.しかしこの間に上部および下部消化管ではX線と内視鏡の診断学が躍進したのに対し,消化吸収の主な舞台の小腸では,両者の進歩が遅々としているので,機能面検査法の進歩を一層close upしたともいえよう.
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