病理夜話
乳房(その2)
金子 仁
1,2
1国立東京第一病院病理
2日医大老研
pp.1425
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203819
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今までに忘れえない失敗が,乳房に関していくつかある.
その1.まだ50歳くらいの,ある会社の重役夫人である.15年くらい前から左の乳房にシコリがあり,別に気にしていなかった.それが最近になり,少しずつ大きくなってきた.当院外科で診察を受け,手術室でそのシコリを摘出し私の所へ送ってきた.ゲフリールで診ると骨があったり,軟骨があったりする.その周囲にある細胞の異型性は少なく,きわめて稀な腫瘍で,何とも診断ができない.パラフィン標本を作ってから返事するので2日ほど待っていただきたいと外科に電話した.外科医はそのシコリのみ摘出して手術を終わり,病理の返事を待つことになったのである.
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