病態生理—最近のトピックス
ネフローゼ症候群と制御理論の導入
古川 俊之
1
1阪大第1内科
pp.464-465
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203579
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浮腫とアルドステロン分泌
ネフローゼ症候群の浮腫にアルドステロン分泌亢進が伴う事実は,Luetcherら(1955)がはじめて明らかにしたが,今日,二次性アルドステロン症は生体のホメオスターシス維持を担う制御系の異常として理解されている.
すなわちネフローゼ症候群で低アルブミン血症が起こると血漿膠滲圧が低下し,毛細血管壁を介する体液分布平衡が乱れて組織間液は相対的に増し,循環血漿が減る.その結果腎血流量が低下すると旁糸球体装置からのレニン放出が促され,これが血中アンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンIを作る.アンジオテンシンIは血中の酵素の働きによって活性型(II)となるが,後者は強力なアルドステロン分泌促進効果をもつ.こうして分泌されたアルドステロンは主として腎の遠位尿細管に作用して,Na+再吸収,K+,H+排泄を促進する.Na+再吸収は一部ADH系を介して水の再吸収をひきおこし,これは細胞外液増加をもたらす.この反応は新しい体液平衡条件が満足されるまで続き,組織間液の増加,すなわち浮腫を生じる.
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