EDITORIAL
ジギタリス剤使用上の反省
高安 正夫
1
1京大内科
pp.1297
発行日 1970年8月10日
Published Date 1970/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203297
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強心剤といえばジギタリス剤以外には考えられなかった頃からみれば心不全の薬物治療も大きく進歩をみ,ジギタリス剤自体についてもかなり変革をみた.いかにして良質のジギタリス葉を手に入れ,薬効が減退しないようにいかに貯え,浸剤あるいは葉末として,いかに適切に使用するかが心不全を治療する心臓専門医の腕のみせどころであった筆者の修練時代には,薬効が不安定でもあったので中毒をおそれて使用量はひかえ目であったし,殊にそれより強力なストロファンチンは急死のおそれありとしてほとんど使用されなかった.
使用法を適切にすれば卓効を呈するストロファンチンが慢性心不全にも使用されるようになった戦後まもない頃を過ぎ,ジギトキシンが精製され,また速効性のジギタリス・ラナータの製剤セジラニッドCが登場し,ジゴキシンが合成され使用されるようにまでなると吸収も良好で力価効力も安定したこともあって,アメリカなどで初期より行なわれた大量急速飽和の方法が一般に行なわれるようになった.これは大きな進歩ではあるけれども,他方ジギタリス中毒に対する注意が喚起されなければならない.
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