臨床メモ
吐乳
竹崎 鼎輔
pp.1234
発行日 1970年7月10日
Published Date 1970/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203282
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吐乳を訴えて来た場合にはまず溢乳と幽門痙攣症ないし幽門狭窄症を考える.前者は正常の現象で心配する必要がない.つまり発育は正常で,他に病的症状を伴わない場合である.病的症状を伴う場合にはいろいろな疾患が考えられる.
最も多いのは咳嗽発作とともに吐く場合である.このような時は百日咳,気管支炎,肺炎,流感,感冒などの鑑別が必要である.つぎに多いのは消化器系疾患であるが,急性消化不良症,中毒症,急性腸炎などを鑑別する.その他,急性熱性疾患たとえば麻疹,猩紅熱,肺炎,流感などの場合は初期によく嘔吐を伴う.重症な場合は髄膜炎様症状を呈する(メニンギスムス).嘔吐が最も激しく現われるのは中枢神経系疾患,殊に髄膜炎,脳炎,ポリオの初期などである.これらの鑑別には髄液検査が必要である.髄液が白濁していれば化膿性髄膜炎か流行性脳脊髄膜炎であるが,混濁がわずかか,透明で塵埃様混濁の程度であってパンディ反応陽性であれば結核性髄膜炎か漿液性髄膜炎であり,両者の鑑別は疾患の経過と結核菌の検出,蜘蛛の巣様フィブリン析出の有無などで行なう.髄液がまったく透明でパンディ陰性の場合は脳炎系統の疾患たとえば日本脳炎,麻疹脳炎,種痘後脳炎などを考える.
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