講座
吐乳の鑑別診断
竹内 薫兵
1,2
1竹内小児科医院
2日本児童学会
pp.14-20
発行日 1955年9月1日
Published Date 1955/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200911
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医師は患者を自ら診断し且つ自ら治療すべき法的義務を負う.若し自ら治療し能わざる場合には適当と思われる医師の治療を受くるべく患者に勧告する.医師に非る人と雖小児の病気に当りては,迅速適正なる治療をいかにすれば良きかの相談を受くる場合は少くないであろう.本誌大部分の読者たる助産婦は,抑もの妊娠の当初以来,妊婦,産婦,母の時期を通して,胎児,産児,小児に関する母の最も良き相談対手であり,最も手近かな家庭顧問であるから,小児の病気の場合に,この病気はかくかくの家庭看護で治すべしとか,一応は医師の診察を受くべしとか,即刻某専門医に走れとか,或はかく家庭処置を行え,私は其間に某病院へ電話をかけましようなどと,親切なる家庭顧問よりも,更にもつと進んだところの,即ち準家庭人とまでなつて世話する関係になることが多いことは,われわれの日常聞賭するところの,実に日本の美風の一つである.助産婦と家庭とはかかるつながりにあるので,助産婦は小児の病気に対して,家庭側の相談に対処し得る知識を予備する必要がある.「吐乳の鑑別診断」は,医師に示すよりも,家庭と特別関係にある助産婦諸姉のための予備知識としてのせる一篇であることを劈頭に申上げる.
さて「吐乳」である.乳を飲んでいる小児が乳を吐く.飯を食べてる子供が飯を吐く.同じく嘔吐であるがこの両者の心配すべき程度は同じでない.
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