新春特集 I Leading Article '70
2 新薬を患者に試みるときの臨床家の心がまえ
新薬臨床検定の前に立ちはだかるもの
佐々木 智也
1
1東大物療内科
pp.12-13
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202921
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待たれる臨床検定評価の客観化
1つの新しい薬が開発されるプロセスをみると,動物に対する各種の毒性実験,薬効実験をすませると臨床応用に進むか否かが定められる.つぎに,有志による人体試験を経てから,病人を使用して臨床検定評価の段階となる.われわれ臨床家がタッチするのは,臨床的評価のみである.その際に採られるべき方法は,可能な限り客観的であることを要し,安全で有用であることが確立されるのが理想である.臨床検定の段階で,副作用ないしは禁忌を完全にチェックすることは本来不可能であるが,可能な限りこれを明らかにし,特定の条件下では使用すべきでないとか,一定の監視を要することを明示したい.
重要なのは,信頼するに足る評価が与えられるべきであることで,いうまでもない.臨床検定にさいして,可能な限り多数の患者に対して,許されるだけ長期間にわたり観察すれば,それに応じて精度が上がるはずである.しかし,臨床的判断というものは,しばしば悪意ではない独断に陥りやすいものであり,評価の客観化が行なわれないかぎり,多数,長期の原則も文字通りの徒労もしくは自己満足に終わるものである.客観化のためには,試験薬と同一形態の擬薬Placeboを利用して対照と比較するほか,それが被験薬であるのか擬薬であるのかを,医師も被検者も知らされずに結果を報告し,それを改めて集計する二重盲検法が最も良いとされている.
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