EDITORIAL
銭型病巣と銭型陰影
立入 弘
1
1阪大放射線科
pp.1420
発行日 1968年12月10日
Published Date 1968/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202467
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"胸部レ線撮影をいろいろな方向からすることのすすめ"について小文を書くことをいまさらに求められる,ということ自体が少々おかしいのではないだろうか.立体を見るのには少なくとも3つのdimensionsで考えるのが当然であり,胸部レ線診断ではまず正面と側面の写真になるのはいうまでもない.もともと胸のレ線写真はなんでも見えると思われすぎであり,しかもそれが大きさも形もすべてを現わしているように受けとられるのは困る,病変の表現にもすでに観念的におかしいのがある.coin lesion(銭型病巣)はその適例で,これは1枚の正面写真で2-3cm径の円形陰影が見えるということにすぎない.側面像が伺じように円形陰影を示せば,これはspherical lesion(球形病巣)であり,正面あるいは側面像で見える陰影はcoin shadow(銭型陰影)といいたい.鎖骨や肋骨と重なって見失う可能性のある肺尖部に対する肺尖撮影の歴史は古いが,縦隔洞,心臓や横隔穹隆後部の病巣の認知に欠くことのできない側面(方)撮影や斜方向撮影の応用の少ないのは胸部結核レ線診断学の功罪であろうか.心臓の検査には各房室や大血管の関係を明らかにせねばならないので,正面,左側面,第1および第2斜方向の4枚は少なくとも必要である.
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