医師法改正を考える
—読者の手紙から—医局の現状に思う
pp.492
発行日 1968年4月10日
Published Date 1968/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202180
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国家試験後ほとんどすべての者がもつとトレーニングを受けたいと思つて大学病院の医局に籍をおきます。他に教育機関がないからです。そして,専門医としての訓練が始まるはずなのです。
だがここに問題があります。新入医局員は訓練を受け,さらに技術を高めたいと思つているのに対して,医局の主任教授や,上級医局員は「自分たちの」あるいは「自分個人の」研究のアシスタントがはいつてきたと考えている傾向があります。そして,それに役だつように教育をする傾向があります。すなわち,本来事務職員がするような雑事だとか,インスタントな手ほどきくらいで,すぐ実験などの下働きに役だつようなことしか教育しません。システミックなトレーニングはだれもしてくれません。いちばんかんじんな教授でさえ医局員に指導するのは回診時のわずかな時間だけです。それも教授が患者をみていませんので,ときどき医局員が教授に教えてやつている珍妙な風景もあります。期待と希望にあふれてはいつてきた新入局員は数カ月ならずして深い絶望におそわれるのです。大学院学生となると,もつと絶望は深いのです。文科系の大学院学生は,世間の常識どおり,一定の教室できちんとした時間に教授から講義を受けたり演習したりしています。しかし,医学の大学院ではこのようなカリキュラムが確立され実行されているのを聞いたことがありません。まつたく名目だけです。
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