話題
がんの免疫療法—第25回日本がん学会,第4回日本がん治療学会合同シンポジウムをかえりみて
平井 秀松
1
1北大・生化学
pp.534
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201740
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表題のシンポジウムの司会を依頼されたので,思いきつて「がんの免疫療法」と名のつてみた。この線の療法がまだなに一つ成功していないのにおこがましいといわれるかもしれぬが,がんに対する免疫現象はたしかに観察される。第一,きわめてまれではあつてもがんの自然治癒は存在するし,手術によつて主要病巣を除去すれば治癒率はよほど高い。この治癒は転移が皆無で,がん細胞のすべてを除去しえたからだと考えるより,少なくとも顕微鏡的には存在したであろう転移細胞が消滅したと考えるべきである。この,正常組織では起こらない,細胞の消滅は免疫反応によると解釈するのがいまのところ常識的だ。ちようど感染症における細菌やウイルスが宿主の免疫反応で駆逐されるように,腫瘍細胞もまた宿主からの抵抗に遭遇しているのではなかろうか? もしそうなら腫瘍の場合もまたワクチンによる予防や免疫血清による治療が成立しうることになる。
現在この方面の知識が蓄積,整理されてきており,このたびの学会や,10月に行なわれた国際がん学会の印象からかなり明るい見透しをもてるように思う。
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