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尿沈渣の染色所見
林 康之
1
1順大・臨床病理
pp.345
発行日 1967年3月10日
Published Date 1967/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201690
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尿沈渣の鏡検でも細胞を見やすく,見おとしをなくするためにいろいろな染色法が考案されている。図1〜2はミリポアフィルターに沈渣を集め,ホルマリン固定後組織切片と同様にヘマトキシリンエオジン染色を行なつたもの,図3はふつうの青インクとサフラニン0の染色,図4は血液染色用ギムザ液で染色したものである。図1は扁平上皮,図2は腎上皮細胞のスタンプ標本,図3は扁平上皮と赤血球,図4は赤血球,白血球とおそらく白血球に由来する円柱と考えられる。
ヘマトキシリンエオジン法は時間がかかり,日常検査の目的には利用できないが,インクによる染色法やギムザ染色法は簡単に実施できる利点がある。インクのメチレンブルーやギムザ液のアヅール色素は細胞核を紫色(青色)に染め,赤血球はエオジンで赤色に,細胞原形質は淡赤色に染め分けられるので見やすいといえる。図4の円柱が白血球系でないかと前述したのは,同図にみられる赤血球の黄色調とまつたく異なることからの類推である。しかし,染色法はただでさえ不正確な尿沈渣の数量的観察を希釈によつていつそう不正確にすることは知らねばならない。全細胞をフィルターで集めてひとつひとつを精密に観察する必要でもないかぎり,たとえば腫瘍細胞の検索などの目的があればべつであるが,日常検査に染色法は必ずしもたいせつな検査とはいえない。
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