今月の主題
呼吸困難
長野 準
1
1九大・胸部疾患研究所
pp.485-489
発行日 1966年4月10日
Published Date 1966/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201251
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呼吸困難とは
喘息患者があえぐような呼吸をし,生命の恐怖で苦しみながら体力を消耗しているのをみた場合,また心疾患で胸部の疼痛,不安を伴つて息ぎれしている患者をみた場合,われわれはちゆうちよせずにDyspnea,呼吸困難とカルテに記載する。しかし運動選手,登山家が他覚的には,せわしい苦しそうな呼吸をしているとみられても,本人はむしろ快適な興奮状態にあるのであつて,この場合は呼吸困難とはいわない。そこで呼吸困難とはいつたい何であるかと考えてみるのに,はなはだ漠然とした概念しかもちあわせていないことがわかるのである。Cournand,RichardsあるいはComroeなどがこんにちまで呼吸困難について,これを定義しているのを要約すると,生体が必要とする換気量をその個体の呼吸能力によつてたやすく供給できないで苦痛がっている状態といえる。すなわち多少要約しすぎるが,呼吸困難は生体が必要とする換気量breathing requirementと,得られる換気量breathing capacityとがつりあわなくなつた状態といえよう。臨床的に漠然と使つている呼吸困難の概念も,この定義のようにこんにちの肺機能の観点から掘り下げてみると,少しは客観的に解明できるように考えられる。
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