痛みのシリーズ・5
がんこな痛みの対策(2)
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.412-413
発行日 1966年3月10日
Published Date 1966/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201232
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胸部の痛み
乳がんや胸郭成形術後にしばしば頑固な痛みがみられるが,このときはまず肋間神経ブロックを診断的に行なつてみて,痛みの局在を知ることである。しかし,皮膚切開が広汎に行なわれていたり,肋骨切除がなされていると,どの節でブロックするべきかに苦慮する。また,通常肋骨角部で行なう肋間神経ブロックも,腋窩線上,乳線上と適宜かえてみなければならない。肋骨角部では肋骨の固定もよく,筋層も厚く,肋間神経が肋骨下縁に出現してくるところであるから,処置は行ない易いが,前方にゆくに従つて,肋間神経がとらえにくくなる。しかも胸郭運動を考えると処置の不確実性や気胸を起こす惧れも増すから,十分の注意が必要である。帯状疱疹の場合も,これに準ずる。
肋間神経ブロックで目的が達せられなければ,傍脊髄ブロックを行なつてみたり,多節にわたるときは硬膜外麻酔を数回反復することも行なわれるが,硬膜外麻酔のときは呼吸停止を起こさぬよう慎重を期す必要がある。胸部の場合,四肢と違つて神経ブロックの効果判定はまつたく感覚テスト以外に頼るものはないので,痛みの訴え方,患者の精神安定度まで観察する必要がある。痛みの局在が2〜3節であり,かつ偏側性で,呼吸運動に影響が大きくないことが確められれば,5%フェノールグリセリンによる脊髄内神経ブロックの適応となる。
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