文献抄録
フィブリン溶解の治療への導入—Lancet, July '64より
外島 英彦
1
1伝染病研究所
pp.618-619
発行日 1965年4月10日
Published Date 1965/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200803
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血管閉塞の原因は数多くあるというのは疑う余地のないことだが,この症患をめぐつて脂質や食事や人種による相違や抗凝固剤やコレステロールを低下させる物質等々が論議の対象にされる中にあつて,フィブリン溶解という問題は無視される場合が多い。現在では血中に能動的フィブリン溶解機構が存在するという十分な証拠があり,フィブリン塊が血管から除去されるのはその機構の働きによるとするものはもはや推測の段階を脱したといつてよいだろう。ただここで,血液凝固とフィブリン溶解との間の動的平衝すなわち,フィブリンが時あつて血管に沈着するに違いないのだが,閉塞が起こり得ない事情の下では除去される運命をたどるというNolfの考え方を承認する必要はない。フィブリン溶解システムは生体内変化のもろもろの過程に一役を演じているのであつて,従来より血管内機能に注意を向けるあまりその役割を狭く限定しすぎてきた嫌いがある,というのが現今の趨勢的見解である。
それにしてもやはりフィブリン溶解は閉塞性血管病と重大な関連を有するものであり,治療に利用できる可能性のあることが明らかにされつつある。治療への導入には二つの方法があり,今酵素的方法,薬理的方法と称しておく。
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