EDITORIAL
治癒について
大島 研三
1
1日大内科
pp.345-346
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200724
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あまりに不用意に使われる治癒という言葉
治るという言葉は,それほどの反省もなく日常使われているが,この簡単な表現がじつははなはだ危険であり,時にはこの言葉のために,あたら患者の生命を失う結果になることも少なくない。この言葉の誤解はどちらかといえば患者の側に多く,医師にはわかつている場合が多いが,しかし医学的にもわかつているようでわからないことがあらためて浮かび上がつてきて,治癒とは何か,はたして治癒といいうるか否かについて,ときどき論戦が行なわれる場合がある。
治癒という言葉は,内容的に見て,(1)完全治癒,(2)不完全治癒,(3)欠損治癒,(4)病的症状および異常検査成績の全面的消失,(5)症候的改善など,いちじるしく程度の違う内容のものを含んだ広い言葉である。このうち完全治癒をのぞいては,将来ふたたび再燃,再発あるいは余病と表現されるような,続発する形を変えた病的状態が起こつてこないとは断言できないものである。
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