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献血制度の推進について
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pp.1375
発行日 1964年12月10日
Published Date 1964/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200614
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現在,わが国で輸血に必要な保存血液の量は,年間60万ℓとされている。保存血液は,血液銀行という施設において製造されているが,供血の方法としては,献血,預血および売血があり,昭和38年度における製造比率は,献血によるものがわずか2.5%にすぎず,売血によるものは97.5%を占め,わが国の血液事情は売血によつてまかなわれているといつても決して過言ではなかつたのである。
ところで,最近,売血による供血者の固定化に伴い,いわゆる「黄色い血」―頻回採血による此重の低い血液,血清肝炎の発生率の高い血液―の増加が取りあげられ,血液事情は国民の保健衛生上由々しい問題に進展したのである。売血行為の是非はともかくとして,社会的弊害を伴う現行の売血制度は,明らかに改善を急がなければならないが,多量の保存血液の需給に応ずるためには,一挙に売血を禁止するなどの積極策を講ずるわけにいかず,ここに血液制度上の大きな悩みの一つがあるわけである。したがつて,いい血液を得るためには,売血制度の弊害を速やかに除去し,できるだけ速やかに献血による保存血液を確保する体制を確立しなければならない。政府は昭和39年度予備費の支出を認め,新らたな角度から,献血思想の普及,献血の組織化および献血受入れ体制の整備について,つぎのような対策を実施することになつたのである。
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