杏林間歩
解剖卒倒
H
pp.879
発行日 1964年9月10日
Published Date 1964/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200469
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三島霜川の小説に「解剖室」がある。「これ,解剖学者にとつては,一箇神聖なる物体である,今日解剖台に据えられて,所謂学術研究の材となる屍体は,美しい少女のそれであつた。」という書き出しで始まる,かれの代表作である。
この作品の主人公は冷徹な解剖学者風早医学士である。没趣味の変人でさえある。この変人が,ある日から毎日りんごを一つポケットに入れてきて昼食のときに食べるという謎の生活が始まつた。風早が,母とふたりで市の場末に住んでいる不幸なりんご売りの少女から,毎朝りんごを1個ずつ買うことになつてからである。その小さな動作が,風早の世界観を変えた。
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