書評
—北川昌伸,定平吉都,伊藤雅文 編—見逃してはならない血液疾患—病理からみた44症例
神田 善伸
1
1自治医大さいたま医療センター・血液科
pp.1993
発行日 2014年10月10日
Published Date 2014/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200049
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『見逃してはならない血液疾患』という医学書院の新刊が手元に届いた.目を引いたのは「病理からみた44症例」というサブタイトルである.血液疾患を扱う書籍で病理を前面に出したものは珍しい.果たして,どのような読者を対象としているのかと思って序文を読んだところ,若手病理医,内科系後期研修医,高学年の医学生をイメージして執筆されたようだ.確かに各疾患について症候をタイトルとし,医師国家試験と同様の形式で症例が提示されており,この形式は医学生や研修医にとってもなじみやすいものである.さらに病理診断の難易度を5段階に,臨床で遭遇する頻度を3段階に分けることによって,それぞれの疾患の位置づけをわかりやすく示している.これなら,「全然わからなかった」といってしょんぼりしている読者も救済されることであろう.
本書にはカラーで印刷されたきれいな画像がふんだんに散りばめられている.評者自身も,研修医時代に病棟に設置された顕微鏡で末梢血塗抹標本や骨髄塗抹標本を日々眺めながら,その美しさに魅せられた一人である.しかし,リンパ節の標本となると,まるで歯が立たない.リンパ腫の組織分類に至っては,病理専門医にとっても難関である場合も多く,「病理診断のセカンドオピニオン」がしばしば行われている.本書の編集者,著者はこのセカンドオピニオンを受ける立場の先生方であり,このような状況も本書を刊行して若手病理医を教育しようという動機付けとなったのではないかと想像する.「血液疾患の病理はどうにも難しくて……」と敬遠している若手病理医がいるとしたら,まずは本書を読むべきである.その際にも病理学的難易度の表記が学習に役立つはずだ.
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