書評
感染症レジデントマニュアル
武田 裕子
1
1東京大学医学教育国際協力研究センター
pp.121
発行日 2006年1月10日
Published Date 2006/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107575
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基礎医学では細菌学を学んだし,抗菌薬についても薬理学で教わった.実習した病棟には抗菌薬を投与されている患者さんもいらした.それなのに,いざ主治医として抗菌薬をオーダーしようとしてハタと困った研修医は少なくないのではないだろうか.どの抗菌薬を選べばよいのか,他の抗菌薬ではなぜダメなのか.投与量と投与間隔は本に書いてあるとおりでよいのか….研修医としてそれぞれの診療科で各臓器の感染症治療を教わっても,異なる起因菌,異なる部位の感染症にはすぐ応用できない気がする.患者さんが高齢であったり,腎機能が低下しているとか妊娠中であるとか,考えなければならない要素が増えて途方に暮れた経験のある研修医もいるのではないだろうか.
「感染症」のマネジメントには,細菌に関する知識,抗菌薬への理解,感染部位や可能性のある起因菌など疾患に特徴的な事柄の3つの軸に沿って立体的に考えることが求められる.そのうえで年齢や基礎疾患の有無など個々の患者さんの状況にあわせた治療法を選択しなくてはならない.これらを体系的に教えられたことがないと,いつまでたっても知識は点と点のままにとどまり,新たな患者さんの治療を求められたときにアプローチできず悩んでしまうことになる.藤本卓司著『感染症レジデントマニュアル』は,そのような研修医のために書かれた教科書である.著者の言葉を借りると,“感染症の「地図」を持たずに迷子になって右往左往している医学生・研修医”を対象としている.
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